外国人材雇用の手続きと流れ

外国人材を雇用するときの知識と手続き

海外進出のため、また日本人の人材不足により外国人雇用に踏み出す企業は現在少なくありません。しかし初めて外国人を雇用する企業は、どのようなことに注意して、どのような流れで手続きをすれば良いか不安な部分が多いと思います。

外国人雇用は、日本人の雇用手続きと同じ部分もあれば、特有の手続きもあります。安易に考えて注意や手続きを怠ってしまうと、外国人の就労が出来なくなるだけでなく雇用した企業側も罰則を受けることとなります。
下記をご覧になり最低限の知識と準備をして、適法・適正な外国人雇用に取り組んで頂きたいと思います。

外国人材の雇用までの主な流れ

①外国籍人材雇用のメリット&デメリットの確認
②従事してもらう職務内容の決定
③募集方法
④面接&事前審査
⑤ビザ(在留資格)取得の可能性
⑥内定 ⇒ 雇用契約
⑦ビザ(在留資格)申請
⑧ビザ(在留資格)許可
⑨雇用後の労務管理
⑩就労中のサポート(職業生活・日常生活・社会生活)
※在留資格「特定技能」など、上記以外の手続きが追加で必要となるものもあります。

外国人材雇用のキーポイント

・資格外活動(違法就労)とならないような職務内容
・日本人と同等以上の報酬
・事業者の労働基準法などの労働関係法令、入管法などの法令遵守
・職業生活、日常生活、社会生活のサポート(行政手続き含む)
・文化、宗教、価値観、考え方、言葉の違いをよく理解する努力が必要
・外国人材との信頼関係を構築する努力

①外国人材雇用のメリット&デメリットの確認

メリット

・外国人材は仕事に真面目に取り組む方が多いです。(私の見解ですが)
・専門技術の習得、キャリア向上意識が高い
・多言語能力が高い
・海外戦略のビジネス思考、スキルを持っている
・事業に対する自身のアイデアの積極的主張
・日本人社員のグローバル感覚の向上
・外国人を皆でサポートすることによる会社内の団結力アップ

デメリット

・文化、宗教、価値観の違いの理解とサポートが必要
・言葉の壁
・入管法をはじめ各種法令による手続きと法令順守
・コミュニケーションがとりにくい

②従事してもらう職務内容の決定

外国人材が日本で働くには、それぞれ従事する活動に対して許可されたビザ(在留資格)が必要である。そのため仕事内容によってはそもそも適合するビザ(在留資格)が存在しない職務があります。

人材を募集をする前に、まず外国人材に従事してもらう仕事内容に適合する在留資格があるのかどうか確認することが重要です。

③募集方法

  • 知人の紹介
  • 大学や専門学校などへの求人を出す
  • インターシップやアルバイト人材をそのまま雇用する
  • SNSなどで求人
  • 自社サイトに求人広告を掲載する
  • 外国人版ハローワーク(外国人雇用サービスサンター)の利用
  • 人材紹介会社(外国人専門有料職業紹介)の利用

④面接&事前審査

海外にいる外国人を雇用する場合

在留資格認定証明書を取得後、証明書を海外の外国籍人材に郵送し、現地で査証を取得してから来日します。

在留中の外国籍人材を雇用する場合

まずは在留カードなどで、不法滞在者かどうか、日本で就労可能な在留資格を持っているのかを確認します。

チェック項目(事前審査)

  • 在留資格
  • 在留期間(在留期間の満了日)(申請中も)
  • 資格外活動の有無(アルバイトなどで雇用する場合)
  • 在留資格番号(HPで番号紹介可能)
  • 特別永住者カード
  • 居住地の記載

上記事項を確認することで、就労の可否やどのような手続き(更新申請・変更申請・就労資格証明書取得)が必要なのかを確認することができます。

【注意】
もし事業主がこの事前審査を怠ってしまい、そもそも働くことができない不法滞在者を雇ってしまうと、不法就労助長罪(3年以下の懲役・300万円以下の罰金)(5年以下の懲役・500万円以下の罰金となる法改正の予定があります)として処罰の対象となってしまいます。

⑤ビザ(在留資格)取得の可能性

外国籍人材が、従事する職務内容でビザ(在留資格)が許可される可能性があるかどうか確認します。具体的には、本人の学歴や職歴と事業所で従事する職務内容に関連性があることが必要となります。大学卒業なのか、専門学校卒業なのかでも在留資格の許可の可能性が変わってきます。

【外国籍人材について】

◆学歴の確認
・大学卒業以上で学士・修士・博士を取得している
・本邦の専修学校卒業以上で専門士・高度専門士の資格を有している
・専攻科目の履修状況の確認
・「国際業務」翻訳・通訳・語学指導で従事する場合は、大学卒業者は通常必要な3年以上の経験は不要です。
  ⇒ 職務内容と専攻科目の関連性確認する
・卒業証明書・成績証明書・単位履修証明書・履歴書を確認させてもらう。
  ⇒コピーでも大丈夫ですので、メールなどに添付するなどして送ってもらう。

◆職歴の確認
・従事する予定の職務で10年以上の経験があるか確認
・従前の勤務先から「在職証明書」を取得できるのかを確認

【自社について】

◆会社要件を確認する(事業の適正性・安定性・継続性などを審査されます)
・事業内容
・本社・事業所の実態
・必要な許認可の有無
・資本金
・売上高
・粗利益
・決算内容
・従業員数
・新設会社や新規事業での雇用 ⇒ 事業計画書必要

この在留資格の許可可能性を判断するには、入管法関係法令の知識が必要となりますので、専門家にご相談されることも有用かと思います。

⑥内定 ⇒ 雇用契約

外国人要件、企業要件、そして職務内容要件などを確認し、在留資格を取得し就労可能であると判断した場合は、雇用契約を締結します。(在留資格を取得できるまでの停止条件付雇用契約を締結)

【雇用契約の留意点】

・労働法に従った過不足のない適法な雇用契約書を作成する必要がある。(労働基準法15条及び施行規則5条)
・できれば外国人の母国語または英語で翻訳したものを添付する。
・トラブルになりそうな事項について、具体的かつ明確に記載されているか確認する。(基本給、有給休暇、時間外労働、賞与、昇給、更新など)
・停止条件条項の確認
・秘密保持誓約条項の記載と誓約書の作成
・報酬額には要注意(ビザ取得に向けて)

⑦ビザ(在留資格)申請

在留資格の許可の可能性のある外国籍人材の内定が決まりましたら、出入国在留管理局へ申請します。

主な3つの申請パターン

①海外にいる人材を招聘する場合
 ⇒在留資格認定証明書交付申請
②日本にいる留学生を雇用する場合
 ⇒在留資格変更許可申請
③日本で既に就労している人材を中途採用する場合
 ⇒在留資格変更許可申請、在留資格更新許可申請、就労資格証明書交付申請のいずれか

申請できる方

【本人、本人から依頼された所属機関の職員(入管からの要事前承認)、申請取次弁護士や行政書士など】
在留資格申請には、出入国管理及び難民認定法をはじめ様々な法的知識が必要となります。どのような申請を、どのような手続きのもと、どのような書類を提出すれば良いのか不安な場合は、専門家へ相談されることをお勧めします。

どのくらい審査にかかるの?

在留資格認定証明書交付申請 ⇒ 1~3か月
在留資格変更・更新許可申請 ⇒ 2週間~1か月
就労資格証明書交付 ⇒ 当日(転職した場合は1~3か月)

⑧ビザ(在留資格)許可

無事に許可されて初めて就労可能となります。許可が取得していないのにフライングで就労することは、不法就労となり退去強制となる可能性があります。 
申請後は、許可・不許可や追加資料の提出のを要請される場合もあります。

認定証明書が交付された場合

交付された認定証明書を、海外にいる本人に郵送※し、本人が日本大使館や領事館で査証(ビザ)の申請をします。査証を取得しましたら、来日し就労開始となります。

※現在は、在留資格認定証明書を紙署名でなくメールで受け取り、そのメールを海外の本人に転送するということも可能です。受け取った本人が、在外領事館などで査証申請する際にその画面を見せたり、画面を印刷したものを添付することで申請できる運用となっております。
※現在は、在留資格認定証明書を紙署名でなくメールで受け取り、そのメールを海外の本人に転送するということも可能です。受け取った本人が、在外領事館などで査証申請する際にその画面を見せたり、画面を印刷したものを添付することで申請できる運用となっております。
入管HP参照:在留申請のオンライン手続

⑨雇用後の労務管理

外国人を雇用したとしても労働基準法をはじめ、最低賃金法、労災保険法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法などの労働関係法令は日本人と同様に適用されます。
ですが、外国人特有の手続きや注意点もあります。

【日本人と同じ手続き】 ⇒ 社会保険・労働保険の加入、税務関係

【外国人特有手続き】(労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況の届出
〇雇用保険適用事業所
・外国人が雇用保険に加入する場合⇒雇用保険被保険者資格取得届・喪失届
・外国人が雇用保険に加入しない場合⇒外国人雇用状況届出書
提出先は:外国人が勤務する事業所施設の住所を管轄するハローワーク

〇雇用保険適用外事業所
中長期在留者の受入れに関する届出(会社役員や個人小規模農林水産業)
提出先:最寄りの地方出入国在留管理官署

※外国人雇用状況に関する届出は、インターネットによる届出も可能です。

社会保険(健康保険・厚生年金)の加入は、適用事業所で適用労働者であれば加入は義務となります。2つの両保険は一括加入であり、どちらかだけ加入したいなど選ぶことはできません。
社会保障協定や年金脱退一時金制度の確認。

⑩就労中のサポート(職業生活・日常生活・社会生活)

外国籍人材は、言葉の壁はもちろん日本文化や就労環境などすぐには理解できない、なじめないといった問題を抱えがちです。せっかく雇用した大切な人材ですので、そのような理由で早期に辞めてしまうということがないようにしたいものです。

事業主や共に働く日本人の方達が彼らをサポートすることが必要でしょう。職務に関することをもちろん、日常生活、社会生活上の事に関しても相談や手続きサポートができれば、会社自体の利益にもつながるのではないかと思います。

外国人の雇用に関する手続きやサポートに不明な点やお悩みお持ちでしたら、お気軽に当事務所までお問合せ下さいませ。


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